「乳がん患者にもセクシーな『美胸』ブラを」乳房の切除経験を生かし起業

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    「BRALABO」を起業した西沢桂子さん | Yuriko Izutani / HuffingtonPost Japan

    私は今も、失ったものを取り戻したくて。だからこの仕事をしてると思います。

    ブラジャーのオーダーメイド販売を手がける「BRALABO」を起業した西沢桂子さん(53)は、自身の乳がん経験を生かして、乳房を切除した女性向けの特別な商品を販売している。西沢さんが、服を着たときに最も美しく見える「美胸」を追求するのには、ファッションの専門家として歩んできたキャリアが生きている。

    東京で、スタイリストや美容ライター、下着の商品開発の仕事をしてきた西沢さんに乳がんが見つかったのは、2011年。その年、手術で左胸を摘出した。

    がんを告知された時に「死ぬかも」とは思わなかったんです。でも、手術をして身体が変わるのが受け入れられなくて、「手術をしない夢のような方法があるんじゃないか」って、10軒以上病院を回りました。それぐらい、嫌だった。でも結局は摘出手術を受けることになって。退院する日は、普通、患者さんは痛いのでブラジャーはつけません。でも、私はお医者さんにもダメって言われたのに、自分のそれまで使っていたブラジャーをつけて帰りました。一瞬たりとも、変わった身体を受け入れたくなかったんです。

    治療のため、手術前に東京での下着の商品開発の仕事も退職。退院から3年間、西沢さんは実家の新潟での療養期間を過ごした。

    療養といっても、月に一度ネイルをしたり、友達と会ったり、普通に暮らしていたんです。でも、鬱々とした気持ちは晴れなかった。私は失ったものを取り戻したくてしょうがなかったんです。今もそうなのかもしれない。気晴らしでは何も解決されなくて…。今までと変わらない自分で生きていきたい。

    それで自分に合うブラジャーを作って、販売する会社を2013年に設立しました。開発を始めて、サンプルを作り終えたのが2015年ごろ。「これなら売れる」と思って、それを持って東京にもう一度戻りました。乳がん患者向けのブラジャーは大手メーカーなども販売していますが、セクシーでエレガントなもの、「美胸」を追求したものは見当たらなかった。

    西沢さんの商品は、手術していない側の乳房のボリュームや柔らかさ、それぞれの手術跡の形に合うように、オーダーメイドで製作される。摘出した側の乳房に対応するシリコンもしくは布製のパッドと、その上につけるブラジャーのセットで、シリコンパッドは、一人ずつ石膏の型をとり、歯科技工士が製作する。左右対称になるように、パッドがずれることなく、自然な胸に見えるように、特別なデザインが施されている。

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    石膏の型で制作されたシリコン製のパッド

    国立がん研究センターによると、日本人女性が罹患するうち最も多いのが乳がん。乳房のがんには、2016年に新たに9万人が罹患するとの予測が発表されていた。また乳がんに罹患する率は年々、増加傾向にある

    一般に、乳がんでの乳房再建では、お腹の組織を移植する方法や、シリコンを収める方法などでの手術が行われる。

    しかし、西沢さんによると「作ったおっぱいは動かないんです」。

    通常、ブラジャーのカップに乳房を収める時に、乳房は形を変える。しかし、裸の胸の形に合わせて再建された乳房をカップに収め、自然な状態に見せることは難しい。

    私の商品は、すべて「バストメイク型」。つまり、裸ではなくブラカップに入った時に乳房の形を表現するのが目的です。人によってどの状態の胸を重視するかはそれぞれの判断です。裸の状態を再現したい人もいるでしょう。でも、私には「もう一度おしゃれして外に出かけたい」という願望があった。また、再建手術は、10年ほど前はそれほど一般的ではなく、その当時乳がんになった方では、再建をしていない方も多いんです。

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    BRALABOのブラジャー

    最近、注文に訪れたお客さんは、西沢さんにこう話したという。

    「乳がんを経験してから10年経って、市販のパッドを入れて満足していたけれど、実は我慢してた。これでやっと人生を取り戻せる」と話してくれました。他にも、手術後の胸の形が変ではないかと気になって、いつも猫背で、人前に出る仕事も控えていた方が、司会の仕事にチャレンジしたという方の話も聞きました。

    自分の姿を愛して、大切にすること、身なりを整えること、おしゃれすることで、沈んだ心も、外とコンタクトを取れるようについてくるんだと思います。

    私は元々ファッションオタクで、この商品も最初から世の中のためになるとか考えていたわけではないんです。ただ、お客様にこんなに喜んでもらえて、私も、自分の人生に誇りが取り戻せたように感じたんです。

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